古物商が課せられている義務

古物商が課せられている義務

1.本人確認の義務

古物商(1号営業)は、(1)古物を買い受ける場合、(2)古物を交換する場合、(3)古物の売却または交換の委託を受ける場合は、以下のいずれかの方法により相手方の身元(住所・氏名・職業・年齢等)を確認しなければなりません。
違反の場合、罰則があり懲役6ヵ月以下または30万円以下の罰金もしくは併科です。

対面による相手方の確認方法
(1)身分証明書、運転免許証、健康保険被保険者証などの証明書(以下「証明書等」)の提示を受ける方法
証明書等の提示を受けられないときは、相手方以外の者に電話などで当該相手方の身元について問い合わせて確認を行います。
(2)住所、氏名、職業および年齢を記載した署名文書の交付を受ける方法
古物商またはその従業者の面前で相手方からその住所、氏名、職業および年齢が記載された署名文書(万年筆やポールペンなどで明瞭に記載され、その者の署名のあるものに限る)交付を受け、必要な質問を行うなどして相手方の身元の確認を行います。当該署名文書に記載された住所、氏名、職業または年齢が疑わしいときは、(1)の方法で相手方の住所、氏名、職業または年齢住所、氏名、職業および年齢を確認しなければなりません。

非対面による相手方の確認方法
インターネットの利用拡大に伴い、これに対応するため、古物商がインターネットを利用して相手方と対面しなくても古物の買い受け等ができるように、そのような非対面取引きにおいて相手方を確認する方法が規定されています。

(1)相手方から電子署名を行ったメールの送信を受ける方法

(2)相手方から印鑑登録証明および登録した印鑑を押印した書面の送付を受ける方法

(3)相手方に対して本人限定郵便等(注1)を送付してその到達を確認する方法

(4)相手方に対して本人限定郵便等(注1)により古物の代金を送付する契約を結ぶ方法

(5)相手方から住民票の写し等(注2)の送付を受け、そこに記載された住所あてに簡易書留等(注3)で転送しない取り扱いで送付して、その到達を確認する方法

(6)相手方から住民票の写し等(注2)の送付を受け、そこに記載された本人名義の預貯金口座等に古物の代金を入金する契約を結ぶ方法

(7)相手方から身分証明書、運転免許証、健康保険被保険者証などの証明書等のコピー(注4)の送付を受け、そこに記載された住所あてに簡易書留等(注3)を転送しない取り扱いで送付してその到達を確認し、併せてそのコピーに記載された本人名義の預貯金口座等に古物の代金を入金する契約を結ぶ方法

(8)上記のいずれかの方法により一度確認を取った相手方にホームページを通じてIDとパスワードを付与して、すでに確認を取った相手方であることを確認する方法

(注1)本人限定郵便等は、郵便局が行う本人限定郵便のほか、信書便事業者が身分証明書等の提示を受けて名宛人本人であることを確認したうえで、本人に配達する信書便物のことです。宅配便はこれに該当しません。
(注2)住民票の写し等の「写し」とは、コピーのことではありません。住民票の写し等は、住民票の記載事項証明書、戸籍謄本・抄本、印鑑登録証明書など市区町村の窓口で交付を受けた各種証明書の原本です。
(注3)簡易書留等は、あて先に届けて受領印をもらうものであることが必要です。
(注4)証明書等のコピーは、運転免許証等のコピーのほか、コピー同程度に鮮明であれば写真画像やスキャナーで読み込んだデータファイルを印刷したものも含まれます。この証明書等のコピーは取引きの記録とともに保存しなければなりません。 

2.取引記録の義務

古物を買い入れたときの記録
古物商は、売買もしくは交換のため、または売買もしくは交換の委託により、古物を受け取ったときは、以下の免責事由に該当する場合を除いて、次のいずれかの方法により、定められた事項(以下、法定事項といいます)を記録しなければなりません。違反の場合は、罰則があり懲役6ヵ月または30万円以下の罰金です。

(記録しなければならない法定事項)
・取引きの年月日
・古物の品目および数量
・古物の特徴
・相手方の住所、職業、氏名および年齢
・相手方の身元確認を行った方法

(記録の方法)
・帳簿
・帳簿に準じるとされた書類(取引伝票等)
・法定事項がすべて記載され営業所における取引きの順に記載することができる様式の書類
・取引伝票等ですべての法定事項を取引きごとに記載できる様式の書類
ここでいう取引伝票等は、法定事項がすべて記載され月単位等で一連の番号が振られ、取引きの順にとじ合わせておかなければなりません。
・コンピュータ入力
すべての法定事項が記載されていることが必要で、コンピュータ管理の場合は、アクセス記録や担当者IDによる管理など国家公安委員会告示で定められた安全基準を確保するよう努力義務が課されています。

古物を売却したときの記録
売却時の記録は、ほとんどの古物は免除されていますが、例外として次の場合は、記録しなければなりません。
違反の場合は、罰則があり懲役6ヵ月または30万円以下の罰金です。

(記録しなければならない事項)
・取引きの年月日
・古物の品目および数量
・古物の特徴
・相手方の住所、職業、氏名および年齢(売却物が自動車の場合は、この項目のみ記録は不要)

(記録しなければならないもの)
売却価格が1万円以上で以下のもの
・美術品類
・時計・宝飾品類
・自動車とその部分品
・自動二輪車、原動機付自転車およびそれらの部分品
売却価格が1万円未満でも以下のもの
・自動二輪車本体、原動機付自転車本体(それらの部分品は除きます)

帳簿等の備え付け義務
古物商は、帳簿(帳簿に準じるとされた書類を含む)を最終の記載をした日から3年間、営業所に備え付け、またはコンピュータ入力による記録を記録した日から3年間、営業所において直ちに書面に表示することができるように保存しておかなければなりません。
そしてこれらの記録をき損、亡失、滅失したときは、直ちに営業所の所在地の所轄警察署に届け出ることとされています。
違反の場合は、罰則があり懲役6ヵ月または30万円以下の罰金です。

3.不正品申告義務

古物商は古物を買い受けたり交換する場合、または売却や交換の委託を受ける場合に、その古物が不正品(盗品、偽造チケット等)の疑いがあると認められるときは、直ちに、警察官にその旨を申告しなければなりません。

この規定は、古物商が古物営業を営むにあたって、盗品が混入しないように常に注意し、不正品の疑いがあると認めるときには、直ちに警察官に申告して、窃盗その他の犯罪の防止と被害の迅速な回復という古物営業法の目的を達成するための重要な義務の一つです。

これを履行しなかった場合、罰則はありませんが、営業停止等の行政処分の対象になります。
また、盗品と知りながら買い受けを行えば、盗品等譲受罪(刑法256条2項)として、10年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。

その他の義務など

・標識の提示義務
公衆の見やすい場所に提示すること

・変更届出義務
 申請と異なる事由が生じた場合は、警察署に届出を行うこと

・管理者選任義務
 営業所ごとに管理者を選任すること

・品触れの保存義務
品触れを受け取った場合には、日付を記録して保存すること。(保存期間:6か月間)
※品触れとは…窃盗事件等の被害品で、その特徴から他の類似品と識別できる場合に、警察が発行する
手配書をいいます。

・許可証の携帯と提示
行商やせり売りをする場合には、「許可証」を携帯し、従業員には「行商従業者証」を携帯させ、取引相手から提示を求められたら提示をしなければなりません。

・差止め
売却等しようとする古物が盗品等の疑いがある場合には、警察本部長又は警察署長から30日以内の期限を定めて、その古物の保管を命じられることがあります。

・名義貸しの禁止
自己の名義をもって、他人にその古物営業を営ませてはいけません。

・取引場所の制限
古物の受取りをする場合は、営業所又は相手方の住居で行わなければいけません。
(仮設店舗営業の届出をした者を除く。)

・立入調査
警察官等は、営業期間中に営業所や保管場所等に立入を行い、古物及び帳簿等を検査し、関係者に質問することができます。また、営業所は、正当な理由なく、この検査を拒否、妨害又は忌避すると処罰されます。

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